これまで普通の、つまり実数のフーリエ級数展開を中心に説明してきましたが、実数のフーリエ級数から[keikou]オイラーの公式[/keikou]を使うと複素フーリエ級数が導出できます。ここで[keikou]ポイントはオイラーの公式[/keikou]です。オイラーの公式は数学の数ある公式の中で最も美しい公式ともいわれている有名な公式です。
[voicel icon=”https://univ-study.net/wp-content/uploads/2022/05/2205042132.jpg” name=”理系大学生ケイスケ”]オイラーの公式か。たしか指数関数と三角関数の関係だったような……。[/voicel][voicer icon=”https://univ-study.net/wp-content/uploads/2022/05/2205042118.jpg” name=”先生”]今回はオイラーの公式さえ知っていれば簡単に複素フーリエ級数展開が導出できるんだ。[/voicer]
とはいえ、複素フーリエ級数もこれまでにさらりとですが触れてきました。今回は、複素フーリエ級数の導出を深く掘り下げての説明をしてゆきます。
オイラーの公式
[voicer icon=”https://univ-study.net/wp-content/uploads/2022/05/2205042119.jpg” name=”先生”]さあ、ケイスケくん、まず、オイラーの公式を覚えてゐるかな。[/voicer][voicel icon=”https://univ-study.net/wp-content/uploads/2022/05/2205042133.jpg” name=”理系大学生ケイスケ”]いやあ、先生、うろ覚えで忘れちゃった。[/voicel]
オイラーの公式はあまりに有名で、理系の数学ではあらゆる場面で登場してくる[keikou]大変重要な公式[/keikou]なのです。それは
$$\mathrm{e}^{ix} = cos\,x + i\,sin\,ix$$
ですね。今回の[keikou]ポイントは全てオイラーの公式に集約[/keikou]されます。上記の式から次の式が導出できます。
[aside type=”sky”]
$$cos\,x = \frac{1}{2}\left(\mathrm{e}^{ix} + \mathrm{e}^{-ix}\right)\tag{1}$$
$$sin\,x = \frac{1}{2i}\left(\mathrm{e}^{ix} – \mathrm{e}^{-ix}\right)\tag{2}$$
[/aside]
これさえ導出できれば後は実数のフーリエ級数展開に代入するだけです。
複素フーリエ級数展開
[voicer icon=”https://univ-study.net/wp-content/uploads/2022/05/2205042118.jpg” name=”先生”]ケイスケくん、実数のフーリエ級数展開は覚えているね。[/voicer] [voicel icon=”https://univ-study.net/wp-content/uploads/2022/05/2205042135.jpg” name=”理系大学生ケイスケ”]はい。[/voicel]
フーリエ級数展開は次のとおりです。
[aside type=”sky”]$$f(x) = \frac{a_0}{2} + \sum_{n=1}^{\infty}\left[ a_n\,cos\left(\frac{2\pi}{L}nx\right) + b_n\,sin\left(\frac{2\pi}{L}nx\right)\right]\tag{3}$$[/aside]そして、係数$$a_nとb_n$$は次のとおりです。
[aside type=”sky”]$$a_n = \frac{2}{L}\int_{0}^{L} f(x)cos\left(\frac{2\pi}{L}nx\right)dx\tag{4}$$$$b_n = \frac{2}{L}\int_{0}^{L}f(x)sin\left(\frac{2\pi}{L}nx\right)dx\tag{5}$$[/aside]
それではいよいよ複素フーリエ級数です。実数のフーリエ級数展開の(3)に(1)と(2)を代入します。
[aside type=”sky”]$$\begin{align*}f(x) \ &=\ \frac{a_0}{2} \ +\ \sum_{n=1}^{\infty} \bigg[ a_n \cos \left( \frac{2\pi}{L} n x \right)\ +\ b_n \sin \left( \frac{2\pi}{L} n x \right) \bigg] \\ &=\ \frac{a_0}{2} \ +\ \sum_{n=1}^{\infty} \bigg[ \frac{a_n}{2} \left( e^{i\frac{2\pi}{L} n x} + e^{-i \frac{2\pi}{L} n x} \right)\ -\ i \, \frac{b_n}{2} \left( e^{i \frac{2\pi}{L} n x} – e^{-i \frac{2\pi}{L} n x} \right) \bigg] \\ &=\ \frac{a_0}{2} \ +\ \sum_{n=1}^{\infty} \bigg[ \frac{a_n – i\,b_n}{2} \, e^{i \frac{2\pi}{L} n x} \ +\ \frac{a_n + i\,b_n}{2} \, e^{-i \frac{2\pi}{L} n x} \bigg] \\ &=\ \frac{a_0}{2} \ +\ \sum_{n=1}^{\infty} \frac{a_n – i\,b_n}{2} \, e^{i \frac{2\pi}{L} n x} \ +\ \sum_{n=1}^{\infty} \frac{a_n + i\,b_n}{2} \, e^{-i \frac{2\pi}{L} n x} \\ &=\ \frac{a_0}{2} \ +\ \sum_{n=1}^{\infty} \frac{a_n – i\,b_n}{2} \, e^{i \frac{2\pi}{L} n x} \ +\ \sum_{n=-1}^{-\infty} \frac{a_{-n} + i\,b_{-n}}{2} \, e^{i \frac{2\pi}{L} n x} \end{align*}$$[/aside] [voicel icon=”https://univ-study.net/wp-content/uploads/2022/05/2205042133.jpg” name=”理系大学生ケイスケ”]先生、最後のところがどうしてそうなるのかわかりません。[/voicel] [voicer icon=”https://univ-study.net/wp-content/uploads/2022/05/2205042118.jpg” name=”先生”]そう、最後のところは辻褄を合わせるために力業を使ったんだ。[/voicer]
$$ \sum_{n=-1}^{-\infty} \frac{a_{-n} + i\,b_{-n}}{2} \, e^{i \frac{2\pi}{L} n x} $$
ここは、[keikou]第一項と第二項の指数関数を同じにするためにちょっとわかりにくいこと[/keikou]をしています。しかし、最後のところがそのすぐ上の式と同じことを意味しているのはわかるはずです。どうしてこのようなことをしたのかは次に説明するとおりです。
[aside type=”sky”]$$\begin{align*}c_n \ &\equiv\ \begin{cases}\frac{1}{2}(a_n – i\,b_n) & (n>0) \\[4pt]\frac{1}{2}(a_{-n} + i\,b_{-n}) & (n\lt 0)\end{cases} \\[3pt]c_0 \ &\equiv\ \frac{a_0}{2} \end{align*}$$[/aside]
が成り立つと仮定します。そうすると、上記の式の続きを行いますと、
[aside type=”sky”]$$\begin{align*}f(x) \ &=\ c_0 \ +\ \sum_{n=1}^{\infty} c_n \, e^{i \frac{2\pi}{L} n x} \ +\ \sum_{n=-1}^{-\infty} c_n \, e^{i \frac{2\pi}{L} n x} \\&=\ \sum_{n=-\infty}^{\infty} c_n \, e^{i \frac{2\pi}{L} n x} \end{align*}$$[/aside]
[voicel icon=”https://univ-study.net/wp-content/uploads/2022/05/2205042132.jpg” name=”理系大学生ケイスケ”]何だあ!? あんなに複雑だったものがとってもシンプルになっちゃったぞ![/voicel]
本当にスッキリしましたね。あの力業はこのためだったのです。[keikou]指数関数を合わせることでとってもシンプル[/keikou]になりました。
さて、ここでさらに突っ込んでみると$$c_nもa_nとb_n$$から指数関数で表せるのです。まず、n > 0の場合を見てみましょう。
[aside type=”sky”]$$\begin{align*}c_n \ &=\ \frac{a_n – i\,b_n}{2} \\&=\ \frac{1}{2} \frac{2}{L} \int^L_0 f(x) \, \bigg[ \cos \left( \frac{2\pi}{L} n x \right) \ -\ i\,\sin \left( \frac{2\pi}{L} n x \right) \bigg] dx\\&=\ \frac{1}{L} \int^L_0 f(x) \, e^{-i \frac{2\pi}{L} n x} dx\end{align*}$$[/aside]
次にn < 0の場合を行います。
[aside type=”sky”]$$\begin{align*}c_n \ &=\ \frac{a_{-n} + i\,b_{-n}}{2} \\&=\ \frac{1}{2} \frac{2}{L} \int^L_0 f(x) \, \bigg[ \cos \left( -\frac{2\pi}{L} n x \right) +\ i\,\sin \left( -\frac{2\pi}{L} n x \right) \bigg] dx \\&=\ \frac{1}{L} \int^L_0 f(x) \, \bigg[ \cos \left( \frac{2\pi}{L} n x \right) -\ i\,\sin \left( \frac{2\pi}{L} n x \right) \bigg] dx \\&=\ \frac{1}{L} \int^L_0 f(x) \, e^{-i \frac{2\pi}{L} n x} dx\end{align*}$$[/aside]
どちらも同じ結果になりました。それではn = 0のときはどうでしょうか。
[aside type=”sky”]$$\begin{align*}c_0 \ =\ \frac{a_0}{2} \ =\ \frac{1}{2} \frac{2}{L} \int^L_0 f(x) dx \ =\ \frac{1}{L} \int^L_0 f(x) dx\end{align*}$$[/aside]
これは$$c_n =にn = 0を代入$$したときと同じですね。つまり、
[aside type=”sky”]$$\begin{align*}c_n \ =\ \frac{1}{L} \int^L_0 f(x) \, e^{-i \frac{2\pi}{L} n x} dx \tag{6}\end{align*}$$[/aside]
複素フーリエ級数はこの$$c_n$$を使えば、
[aside type=”sky”]$$\begin{align*}f(x) \ =\ \sum_{n=-\infty}^{\infty} c_n \, e^{i \frac{2\pi}{L} n x} \tag{7}\end{align*}$$[/aside]
で表せるのです。なんとスッキリしたことか!
まとめ
実数のフーリエ級数から複素フーリエ級数が導出されました。それはちょっと数学的な力業を用いましたが、複素フーリエ級数がシンプルな形になるということを見通してのことです。
最初に結論ありきはいけないのですが、複素フーリエ級数に関して実数のフーリエ級数からどう導出されるのか書いてある参考書があまりにも少ないので、[keikou]どのように導けばいいのか、その道筋をここで説明してみました。[/keikou]