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ケーリーハミルトンの定理の証明と演習問題

今回のテーマは、ケーリーハミルトンの定理です。

この定理はアーサー・ケーリーウィリアム・ローワン・ハミルトンという2人の人物の名前にちなんでいます。

ケーリー・ハミルトンっていう人の定理かと思ってた!

線形代数学において、この定理は最も有名な定理と言えるでしょう。

この定理はかなり使えるので、かならず使えるようになろう!

ケーリーハミルトンの定理の証明

ポイント

ケーリーハミルトンの定理は以下の通りである。

正方行列 \(A\) に対して、\(det(A-λE)\) という多項式の \(λ\) の部分を \(A\) に変えたものは零行列になる。

λ というのは、これまであまり出てきていない記号ですが、「ラムダ」と読みます。

2×2行列のときの一般形は以下の通りです。

\(A=\begin{pmatrix}a&b\\c&d \end{pmatrix}\)とします。

このとき、固有多項式は、\(det(A-λE)=λ^2-(a+d)λ+(ad-bc)λ^0\)

この式に関して、\(λ\) に\(A\) を代入すると、2×2行列のケーリーハミルトンの定理は以下になることがわかります。

\(A^2-(a+d)A+(ad-bc)E=O\)

証明を簡単にしてみましょう。

\(A^2=\begin{pmatrix}a^2+bc&ab+bd\\ac+cd&bc+d^2 \end{pmatrix}\)

\(-(a+d)A=\begin{pmatrix}-a^2-ad&-ad-bd\\-ac-cd&-ad-d^2 \end{pmatrix}\)

\((ad-bc)I=\begin{pmatrix}ad-bc&0\\0&ad-bc \end{pmatrix}\)

よって、これらを代入すると\(A^2-(a+d)A+(ad-bc)E=O\)が成り立つ。

計算すればいいだけか、この証明は簡単だ!

ケーリーハミルトンの定理はなぜ有用!?

さて、ケーリーハミルトンの定理と証明方法に関しては理解できたと思います。

ここで、実際にどのような場面で使うのか実例をみてみましょう!

問題:\(A=\begin{pmatrix}3&1\\-2&-1 \end{pmatrix}\)のとき、\(A^2 , A^3\) を求めよ。

まずは \(A^2=\begin{pmatrix}3&1\\-2&-1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix}3&1\\-2&-1 \end{pmatrix}\) を計算してっと・・・

ちょっと待った!!!おいおい、今まで一体何を聞いてたんだ!

え~・・・何か計算ミスしてるのかな・・・

そうじゃなくて、ケーリーハミルトンの定理をせっかくだから使って計算してみたらどうだ、と言いたいのだが。

は、はい!

では、気を取り直して・・・

ケーリーハミルトンの定理より、\(A^2-2A-E=O\) となるため、

\(A^2=2A+E\)

\(=2\begin{pmatrix}3&1\\-2&-1 \end{pmatrix}+\begin{pmatrix}1&0\\0&1 \end{pmatrix}\)

\(=\begin{pmatrix}7&2\\-4&-1 \end{pmatrix}\)

同様にして、\(A^3=(2A+E)A=2A^2+A=2(2A+E)+A=5A+2E\)

\(=\begin{pmatrix}17&-10\\5&-3 \end{pmatrix}\)

すごい!!行列同士の積にならずに簡単な計算になった!!!

ケーリーハミルトンの定理の有用性はこのように、次数を下げることができるというところにあるんだ。

特に一番有効なのは、\(n\) 乗に対してです。ケーリーハミルトンの定理を使わずに、普通に計算しようと思っても、\(n\) 回行列の積の計算をするのは実質不可能ですよね。

しかし、ケーリーハミルトンの定理を使うことで解決します。

\(A^n=α_nA+β_nE\) とおくと、このとき

\(A^{n+1} =AA^n =A(α_nA+β_nE)=α_nA^2+β_nA=α_n(-3A-2E)+β_nA\)

\(=(-3α_n+β_n)A-2α_nE=α_{n+1}A+β_{n+1}E\)

と表すことができます。よって漸化式を利用することにより、

\(α_n=(-1)^n-(-2)^n\) となるため、

\(A^n=\begin{pmatrix}-3(-1)^{n-1}+4(-2)^{n-1}&2(-1)^n-2(-2)^n\\-3(-1)^n+3(-2)^n&2(-1)^{n-1}-6(-2)^{n-1} \end{pmatrix}\)

と表すことができる。

つまり、まとめるとケーリーハミルトンの定理とは、

①次数を下げること

② n乗の計算ができること

において便利であるといえます。

なるほど~かなり使い勝手のいい定理なんだなぁ・・・

この定理は忘れずに、常に念頭におき、使える場面では積極的に使おうな!

いかがでしたでしょうか。

ケーリーハミルトンの定理を応用し、一見計算が難しい問題でも、簡単に解けるように工夫してみてくださいね!

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