ベクトルの直交から関数の直交を定義づけます。ここで重要な考え方は内積です。ベクトルの内積で0になる場合がお互いのベクトルが直交しているということでした。そして、関数の内積を定義しました。それを使って関数の直交を導きます。
そして、直交する関数を直交関数系といいます。それは三角関数などが含まれます。また、フーリエ解析でも直交関数系が存在します。それにも触れながら直交関数系を説明します。
関数が直交するって?
まず、$$ベクトル\vec{A}と\vec{B}$$が直交するとはどのようなとき、直交するといったでしょうか。$$ベクトル\vec{A}と\vec{B}$$を単位ベクトルで展開すると、
$$e_1 = \left(\begin{array}{c} 1 \\ 0 \\ 0 \end{array}\right)$$
$$e_2 = \left(\begin{array}{c} 0 \\ 1 \\ 0 \end{array}\right)$$
$$e_3= \left(\begin{array}{c} 0 \\ 0 \\ 1 \end{array}\right)$$
から
$$\vec{A} = A_1e_1 + A_2e_2 + A_3e_3,\vec{B} = B_1e_1 + B_2e_2 + B_3e_3$$に展開できます。
この内積は
ならばベクトル$$\vec{A}と\vec{B}$$は直交するといいます。思い出したでしょうか。これはベクトルでの話です。これを拡張して関数に応用するのです。
$$関数A(x)(a ≦ x ≦ b)$$を考えます。あるxに対するA(x)はベクトルの成分とみなせます。これがキモです。関数をベクトルとみなしてしまうのです。
そうするとxは連続変数ですので、A(x)は無限個の成分をもつベクトル(無限次元のベクトル)とみなせるのです。このことからベクトルの場合にならって積の和(実際には積分です)を作ります。
ならば二つの関数A(x)とB(x)は区間[a, b]で直交するといいます。
フーリエ級数展開のおさらい
さて、フーリエ級数展開を覚えていますか。ここでおさらいします。フーリエ級数展開の実数値は、以下のとおりです。
ここで上記の式を周期2πのものとして書き直します。その方がわかりやすいのでそうします。
ここまではよいでしょうか。
複素フーリエ級数
ここで、複素数のフーリエ級数を考えます。第n複素フーリエ級数cnを、
によって定義し、これを係数とする級数は
となり、これを複素フーリエ級数といいます。これも周期2πのものとして書き換えると、
そして、cnは、
ここに(1)を代入します。nをmに代えて、
これは()内を展開すると、次の式が期待されるのです。ここがキモなのです。
これの証明は各自にまかせます。そんなに難しくありません。
以上のことから
$$\{\cdots,\mathrm{e}^{-2i\frac{2\pi}{L} }x,\mathrm{e}^{-i\frac{2\pi}{L}} ,1,\mathrm{e}^{i\frac{2\pi}{L}} ,\mathrm{e}^{2i\frac{2\pi}{L}} ,\cdots\}$$
という関数の集まりが得られます。この関数の集まりから任意に二つの関数を選んでかけ合わせると0になります。つまり、直交関数系が成り立っているのです。
ちょっと背伸びをして複素フーリエ級数を扱いましたが、わかったでしょうか。
オイラーの公式は非常に重要ですのでしっかりと覚えてください。
まとめ
直交関数系はベクトルの直交、つまり内積が0になることを拡張して、それを関数に応用したものです。任意の関数A(x)とB(x)の積分しての積が0になれば、それを直交関数系といいます。
ここでは背伸びをして複素フーリエ級数を扱い、直交関数系ということがわかりました。この後は、正規直交関数系やディラックのδ関数などはまだここでは触れていません。それらはまたの機会に必ず触れます。そのためにも直交関数系を理解してください。